第35回   不思議な世界の不思議な人 1996.10.21


 さて、今日のネタですが、ちんぽくんの『日記物語』のサブテキストにでもなればと思って、ファンタジーの分類について書いてみました。
 ‥‥で、書き終えて読み直してみると、どうも、ほとんど参考にならないようです。うーむ、「メタファー論」でも書いた方がよかったかも知れません。
 でもまあ、ボツにするのも惜しいのでとりあえずアップします。

 「ファンタジー」という言葉は、文学の種類のひとつである。辞書的定義では、「話の展開の中に超自然の要素を含む物語」ということになる。超自然の要素、すなわち、魔法とか空想上の動物とか神様とか‥‥そういったものが登場する物語である。
 ファンタジーを分類する際には、「世界」と「人」という、二つの指標を使うのが一般的である。すなわち、「普通の世界」と「不思議な世界」、「普通の人」と「不思議な人」である。

 分類その1。
 物語の中心になる舞台は「普通の世界」で、登場人物にも普通の人が多い。そこに、魔法使いとかドラゴンとか人語を解する動物とか、「不思議な人(人じゃない場合もあるが)」が入ってきて、不思議なドラマが展開する、というものである。こうしたファンタジーを、「エブリデイ・マジック」と呼ぶ。すなわち、日常世界の中の魔法、である。
 作品例としては、『砂の妖精』(E・ネズビット)や『床の下の小人たち』(メアリー・ノートン)などがある。漫画では『オバケのQ太郎』(藤子・F・不二雄)、『うる星やつら』(高橋留美子)、『あおいちゃんパニック!』(竹本泉)など、アニメでは『魔女の宅急便』といったところだろうか。

 分類その2。
 エブリデイ・マジックが「普通の世界の不思議な人」を描くのと反対に、「不思議な世界の普通の人」を描くものがある。ごく普通の人間である主人公が不思議な世界に迷い込んで冒険する、というものである。(これは何と呼ばれるのか、残念ながら知らない。誰か知っていたら教えてください)
 作品例としては、『ナルニア国物語』(う、作者名忘れた)、『不思議の国のアリス』(ルイス・キャロル)、漫画では『彼方から』(ひかわきょうこ)、『セブンブリッジ』(板橋しゅうほう)、『ダークグリーン』(佐々木淳子)など、アニメでは『魔法剣士レイアース』などがある。(なんだか漫画の作品例が偏っているような気がするが‥‥)

 分類その3。
 舞台も登場人物もまったく不思議な世界、すなわち「不思議な世界の不思議な人」である。我々の住む現実世界と全然つながりのない、「異世界だけ」の物語である。これは「エピック・ファンタジー」と呼ぶ。エピックとは、叙事詩のことである。
 作品例としては、『指輪物語』(J・R・R・トールキン)、『グイン・サーガ』(栗本薫)、漫画では『ピグマリオ』(和田慎二)、『バスタード!』(萩原一至)、『アタゴオル玉手箱』(ますむらひろし)、アニメでは‥‥うーむ、思いつかない。(しかし、やっぱり漫画の作品例は偏ってるぞ)

 分類その4。
 舞台も登場人物もまったく普通の世界、すなわち「普通の世界の普通の人」である。
 作品例としては、『モンテ・クリスト伯』(A・デュマ)、『点と線』(松本清張)、漫画では『ナニワ金融道』(青木雄二)、『キャプテン翼』(高橋陽一)、『ガラスの仮面』(美内すずえ)、アニメでは『サザエさん』‥‥って、よく考えてみたら、これはファンタジーじゃないな。(←ボケが長いって)

 で、問題の『日記物語』であるが、さて、どの分類に入るのだろう?
 表面を見れば3のようだが、実は2かも知れないし、やっぱり4だったということも十分あり得る。これはやはり、舞台設定をいいかげんにした作者が悪い、ということで許しを乞おう(誰に?)。


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