第134回   こちら建築110番 1997.5.14


「はい、こちら建築110番です」
「聞いてください! 大ショックなんです!」
「はいはい、なんでしょう?」
「あんなに頑張って3度も塗った床ニスが、不良品だったと判明したんです! 苦労がすべて水の泡です! どうすればいいでしょうか?」
「それはもう、どうしようもないですねえ」
「そんなこと言わずに、なんとかしてください!」
「そう言われても、どうしようもないものはどうしようもないんであって‥‥」
「とにかく、なんとかしてください」
「やめましょう、ニス掛け論は」
「‥‥‥‥」
「えーと、お宅の家族構成はどうなっています?」
「はい、夫と、子供が一人います」
「だったら、ニスは塗らない方がよかったですね。親子三人ニスいらず」
「きーーーーっ! 怒りますよ!」
「まあまあ、ニスに流してください」

「はい、こちら建築110番です」
「聞いてください! 大ショックなんです!」
「はいはい、なんでしょう?」
「ついうっかりして、玄関を鬼門に作ってしまったんです! どうすればいいでしょうか?」
「それはもう、どうしようもないですねえ。ポールシフトで極が逆転するのを待ってください」

「はい、こちら建築110番です」
「聞いてください! 大ショックなんです!」
「はいはい、なんでしょう?」
「となりの空き地に囲いができたんです! どうすればいいでしょうか?」
「その囲いは、かっこいい囲いですか? かっこわるい囲いですか?」
「うーん、どちらかといえばかっこわるい囲いですねえ。あちこち穴があいてますし」
「なるほど。その穴は、格好のカッコウの巣になりそうですね」
「そうなんですよ。なんだか、目つきの悪いカッコウが何羽か住みついて、悪事の相談をしているようなんですが」
「なるほど。カッコウだけに、タクランでますねえ」

「はい、こちら建築110番です」
「聞いてください! 大ショックなんです!」
「はいはい、なんでしょう?」
「隣の人が庭に植えたカラシレンコンが、うちの庭に生えてきたんです! どうすればいいでしょうか?」
「ああ、それは、かまわないから切っちゃってください。自分の土地に生えてきたものですから。醤油をかけて食べるとうまいですよ」
「そうですか、わかりました! で、醤油はどれくらいかければいいでしょうか?」
「ほんの少しでいいです。レンコン一滴」

「はい、こちら建築110番です」
「聞いてください! 大ショックなんです!」
「はいはい、なんでしょう?」
「隣のカキの木の枝が、うちの庭の方にはみ出しているんです! どうすればいいでしょうか?」
「ああ、それは、かまわないから切っちゃってください。醤油をかけなくてもうまいですよ」
「でも、実はなってないんですけど。隣の客が全部食べちゃいました」
「じゃあ、八百屋で買ってくるしかないですねえ。あ、買うときはキャッシュですよ。カキ現金」

「はい、こちら建築110番です」
「聞いてください! 大ショックなんです!」
「はいはい、なんでしょう?」
「隣のガキが、塀の上から顔を出してうちの庭をのぞくんです! どうすればいいでしょうか?」
「ああ、それは、かまわないから‥‥」


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