第213回   本当にあった怖い話  1998.10.11





 これは、私の友人が体験した話で、本当にあった出来事である。
 ある公園を夜中に通りかかると、真っ白の服を着た子供が一人でブランコに乗っている。こんな夜中にどうしたんだろう、と思って声をかけると「一緒に遊ぼ」と言う。彼はなんだか怖くなって「ダメだ。おうちに帰りなさい」と答えて帰宅した。あとで近所の人に聞いたところ、それは数年前にその公園で殺された子供の霊で、「いやだ」と答えると無事に帰れるけど「いいよ」と答えるとブランコの鎖で首を絞められて殺されてしまう、という話だった。


 これは、私の友人が体験した話で、本当にあった出来事である。
 その友人はある日、よく当たると評判の占い師に見てもらった。その占い師は、「あなたは白い松の木に殺される」と言った。それほど信じているわけではなかったが、その友人はなるべく松の木に近づかないように注意していた。
 その友人がある日、虫垂炎にかかった。命に関わるような病気ではないので安心していたが、手術室に運ばれる途中で、白衣の医師が声をかけてきた。
「よろしく。私が執刀医の松木です」


 これは、私の友人が体験した話で、本当にあった出来事である。
 神戸の六甲山中に、よく怪奇現象が起きるというトンネルがある。その噂を聞いた男は、どんなことが起きるのか確認してやろうと仲間数人で夜中に車でそのトンネルまで行った。いよいよトンネルに入る、ということでみんな緊張したが、中に入ってしばらく走っていても何も起こらない。そして、何も起こらないままトンネルを抜けてしまった。みんなは、拍子抜けして帰宅した。
 ところが翌日、別の友人に聞いたところ、そのトンネルは阪神大震災の時に土砂崩れがあって今も通行禁止になっているはず、という。あわてて確認に行ったら、そのトンネルは入り口からすぐのところで土砂が崩れ、車はおろか人間さえ通行できない状態だった。


 これは、私の友人が体験した話で、本当にあった出来事である。
 ある夜、彼女はこんな夢を見た。会社で残業をした帰り、駅からの寂しい道を歩いていると、後ろに黒ずくめの男が歩いている。その男は彼女の後をついてきているような気がする。何度か道を曲がっても、やはり男はついてくる。怖くなって近くの電話ボックスに飛び込み、家に電話して母親に迎えに来てくれるように言った。しかし母親は「馬鹿なこと言ってないで早く帰ってきなさい」と答えるだけ。あきらめて電話ボックスを出ると目の前にその男がいて、彼女はナイフで刺されてしまう。ここで目が覚めた。
 その翌日、彼女が駅からの道を歩いていると、後をつけてくる男がいる。彼女は怖くなって電話ボックスに飛び込もうとするが、夢のことを思い出して、電話ボックスには入らずにそのまま家まで走って帰った。玄関を入る寸前、どこからともなく男の声が聞こえてきた。
「夢と違うことするんじゃねえよ」


 これは、私の友人が体験した話で、本当にあった出来事である。
 その友人は、バイクの後ろに彼女を乗せて夜の山道を走っていた。曲がりくねった道を猛スピードで走っていくと、カーブを曲がったとたん、目の前に道路標識があらわれた。ポールが折れ曲がって、標識の部分が水平になってちょうど彼の首のあたりに来るようになっている。彼はあわてて首をすくめると、その標識の下を通過したが、しばらく走って後ろを見ると乗っているのは彼女の胴体だけだ。首は、さっきの標識で切断されてしまったらしい。
 びっくりして引き返すと、標識の近くにヘルメットが転がっていた。持ち上げてみると、中には彼女の首が入っている。その首はまだ生きていて、きょとんとした目で彼の方を見ると、こうつぶやいた。
「ねえ、あたし、どうしちゃったの?」


 これは、私の友人が体験した話で、本当にあった出来事である。
 彼はホームページを持っていて、そこで雑文を書いているのだが、しばしば架空の怪談をでっちあげて「本当にあった出来事である」と称し、読者を怖がらせて喜んでいた。ある日、彼はこんな話をでっちあげた。
 ある公園を夜中に通りかかると、真っ白の服を着た子供が一人でブランコに乗っている。こんな夜中にどうしたんだろう、と思って声をかけると「一緒に遊ぼ」と言う。彼はなんだか怖くなって「ダメだ。おうちに帰りなさい」と答えて帰宅した。あとで近所の人に聞いたところ、それは数年前にその公園で殺された子供の霊で、「いやだ」と答えると無事に帰れるけど「いいよ」と答えるとブランコの鎖で首を絞められて殺されてしまう、という話だった。
 なぜかこの話は受けて、たちまち広がってしまう。彼は、自分のでっちあげた話がさも真実のように語られるのを聞いてほくそ笑んでいた。
 そしてある日、残業をした帰り道、彼が公園を通りかかると真っ白の服を着た子供がブランコに乗っていた。彼はつい声をかけてしまったが、その子供は「一緒に遊ぼ」と言う。あれ、おれが作った話にそっくりだな、でもそんなことはないだろ、と思って気軽に「いいよ」と答えたら、翌朝ブランコの鎖で首を絞められて死んだ姿で発見された。
 みんなは、ウソの怪談ばかりでっちあげていたからバチがあたったんだな、と話していたという。




第212回へ / 第213回 / 第214回へ

 目次へ戻る