第57回   合格したい 1996.11.14


 これを読んでいる人の中に大学受験生はほとんどいないでしょうが、某秘密の国家試験などを受験する人はたまにいるようです。そんな人の中には、合格祈願としてお守りや絵馬などを買っている人もいるでしょう。
 お守り程度ならいいのですが、世の中には一風変わった『合格グッズ』があるようで‥‥。今日は、そんな話です。

 ある本で、合格祈願の置物の広告を見たことがある。五角形の台座の上に、合格と書かれたタコが載っている、というもので、これを机の上に置いて勉強すると、必ず合格するらしい。
 説明を読むと、いろいろと書いてある。台座が五角形なのは、すなわち、五角=ごぉかく=合格、というダジャレだそうだ。そして、なぜタコなのか、と疑問に思って商品名を見ると‥‥『置くとパス』。
 ‥‥‥‥‥‥‥‥命名者は、ひょっとしてみやちょか?(すいません、最近やたらと引き合いに出して)
 まあ、命名者が誰であろうとかまわない。要するに、合格グッズなどダジャレでいくらでも作れる、ということである。これなら私にも思いつきそうだ。考えてみよう。

 見事、試験に合格するには何が必要か。学力はもちろんだが、体力も重要である。長い受験勉強を乗り切っていくために、体力作りが欠かせない。だから、体力作りにも役立つ合格グッズを作れば一石二鳥だろう。
 体力作りには、素振りが一番である。素振りといえば、もちろん竹刀(しない)だ。そこで、竹刀に合格と書いてみよう。いい合格グッズになるだろう。
 商品名は‥‥『合格竹刀』。
 おかしい。なぜ、こんな不吉な名前になってしまうのだろう。とにかく、こんな名前では売り上げは望めない。他のものを考えよう。

 体力が重要だ、という観点はよかった。ここで、運動の方にいってしまったのが悪かったのだ。やはり、体力作りには食べ物だろう。
 元気が出る食べ物といえば、するめである。するめには、ドリンク剤などにも入っているタウリンが、1000mgかどうかはわからないが、とにかく豊富に含まれているのだ。これを食べれば元気いっぱい、合格間違いなしだ。そこで、するめに合格と書いてみよう。
 商品名は‥‥『合格するめぇ』。
 まただ。どうしても不吉な名前になってしまう。これも没にしよう。

 体力作りはひとまず置いておこう。何か、頭が良くなるような食べ物はないだろうか。
 インドには、羊の脳を煮込んだカレーがあるらしいが、脳を食べるといかにも頭が良くなりそうである。しかし、羊というのはいかにものんびりとしていて、効果が少なそうだ。他にもっと、素早くてかっこいいイメージの動物はいないものか。
 そうだ、サメである。サメの脳ならとても頭が良くなりそうだ。そういえば、サメのことをフカとも呼ぶ。そこで、フカの脳に合格と書いてみよう。
 商品名は‥‥『合格フカ脳』。
 これもダメか。どうして、こんな不吉な名前しか考えつかないのだろう。これも却下である。

 実用的なものを考えるからいけないのだ。ここはやはり縁起物、ひたすらめでたいものを使うことにしよう。
 縁起物といえば、七福神である。なにしろ、七福神の乗った宝船の絵を枕の下に置いておけばいい夢が見られるというくらいだから、これほどめでたいものはない。
 今度は大丈夫だろう。そこで、宝船に合格と書いてみよう。
 商品名は‥‥『合格船』。
 合格せん? ‥‥やっぱりダメだ。もう、あきらめよう。どうやら私には、ネーミングのセンスはないようである。


 死体に合格と書いて、『合格したい』。もういいって。


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