第80回   こんな会社に誰がした 1996.12.13


 いつも「指からでまかせ」ばかり書いているが、今回はすべて実話、私の会社の話である。

 研究所の各課には、実際に研究を担当する社員の他に庶務担当者がいるが、庶務担当者には女性が多い。女性の場合はセクレタリーと呼ばれるが、男性の場合はセクレ太郎と呼ばれる。

 業界用語かどうかはわからないが、「ヒマ」のことを「マーヒー」と言うことが多い。
「マーヒーな人のところには仕事は来ず、忙しい人のところに仕事が集中する」
 これを、マーヒーの法則と呼ぶ。

 マーフィーの法則が流行っていたころ、社内報で「社内版・マーフィーの法則」を募集したことがあった。七百通以上の投稿があったという。この「社内版・マーフィーの法則」は、現在でも社内専用ホームページで見ることができる。そのうちのいくつかを紹介しよう。

 必要と思われる商品がなかなか出ず、なんでこんな商品を発売したかと思われる商品に限って早く出る。

 売れないと思った商品は絶対に売れない。売れると思った商品もめったに売れない。

 機械の故障パーツは、自社品にかぎられる。

 制御部品には他社のパーツが使われている。

 できるセールスマンは、データと人脈とカンを口先だけでまとめる。
 普通のセールスマンは、情報と知識と経験を紙とえんぴつでまとめる。
 だめなセールスマンは、ウワサと憶測とハッタリをワープロでまとめる。

 問題解決にあたって、上司は部下に常にアドバイスをしなければならない。それは、問題を永久に解決しないためである。

 客先の指定納期は、ギリギリ間に合わないように指定されている。

 大企業病と言われだすと誰が責任者か解らなくなり、問題が解決する。責任者を不責にするために使う言葉である。

 会議の目的は、後日、議事録を読んで初めて理解される。

 センドーは一人がベストで、アキホがベター、あまり多いと紛糾だ。

 年寄り同士の意志決定は時間がかかる。若者同士の意志決定にはその倍ほど時間がかかる。年寄りと若者の混合になるともはや意志決定できない。

 このまま進めばドブに落ちると分かっていても、皆といっしょなら落ちる奴がいる。

 ファイル容量、CPUパワー、日数、給料は、常に2割足りない。

 プロジェクト管理者は「遅れている」ことを知ろうとするが、設計者は「遅れている」ことだけは知られたくないと思っている。

 これは大傑作というマーフィーの法則は、公表するとクビが危ない。

 社内報で「マーフィーの法則」を取りあげる頃には、既にブームのピークは過ぎてしまっている。



 あるミーティングの席上にて。
 一人が「なんと‥‥」と言って絶句すると、すかさず三人から三様のボケが出た。
「‥‥水鳥拳」
「‥‥なくクリスタル」
「‥‥は夢の始発駅」
 ちなみに、「南都は夢の始発駅」とは、南都銀行のローカルCMである。

 しばらく前に社内で流行った言葉。
「それとこれとは別件バウアー」

「‥‥業績達成のために、是非、皆さんの強力な協力をお願いしたい」
 社長、新年度のあいさつに、つまらないシャレでオチをつけないでください。

 そろそろ、社名を知りたくなってきた人もいるかもしれない。せっかくだから教えよう。
 ‥‥そう、十年以上も前のことだろうか、こんなCMがテレビで流れていた時期があった。
「むろん、オムロン」


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