第110回   助けてマイク 1997.1.27


 中学生のころ、私はいじめられっ子だった。
 いじめていたのは、宇野宏というクラスメートである。宇野は私を毎日のようにいじめていた。それはまさに、枚挙にいとまがないほどだ。‥‥いや、「まいきょ」だから、「い」と「ま」はあるのか。
 そんな私を、いつもかばってくれたのはアメリカ人とのハーフのマイク吉田である。マイクは、成績は良くなかったがスポーツ万能で、私の数少ない友人の一人だった。

 そんなある日、私のクラスに転校生がやってきた。
 その転校生の名前を聞いたとき、私はいやな予感がした。高野宏、といったのだ。ありゃまた宏、である。
 私のいやな予感は当たり、転校生の高野は宇野と一緒になって私をいじめ始めたのだ。私は二人をうらんだ。なにも、そんなに躍起になって私をいじめるネタを見つけてくることはないじゃないか。ちくしょう、宇野め!高野め!

 そして、ある日の放課後、私はまた二人にいじめられていた。その日のいじめは、いつになく陰湿だったので、私はマイクに助けを求めに行くことにした。
 学校中探したが、マイクの姿は見えなかった。私はあせった。廊下で会ったクラスメートに聞いてみると、マイクは数学で赤点を取って、追試を受けている最中だという。なるほど、だから助けられなかったのか。ただいまマイクはテスト中、である。


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