第191回   究極の少子化対策  1998.7.6





 どうやら日本は、本格的な高齢化社会への道を歩んでいるようだ。老人が増え、子供が減っていく傾向にある。いわゆる少子化である。さらに核家族が増え、一世帯当たりの人数も急激に減少している。東京や大阪などの都市部では、すでに一世帯あたり1.0人を下回っているほどだ。
 子供が減少するとどうなるか。まず、年金や健康保険などのシステムが破綻する。これらは、若くて健康な者が多いときにのみ有効に働くシステムなのだ。老人の方が多くなればまともに機能しなくなるのは目に見えている。
 また、このまま行くと、あと千年もすれば日本の人口はゼロになる、などと言われている。それは困る。最低でも11人いなければ、ワールドカップに出場できないではないか。日本がワールドカップで優勝するためにも(千年もあれば一度くらいは優勝できるだろう)少子化の問題を何とか解決しなければならない。
 この少子化傾向に歯止めをかけるためには、少子化の原因を究明することが必要である。原因さえわかれば、対策も考えられるだろう。そこで今日は、少子化の原因と対策について考えてみることにする。

 なぜ子供が減るのか。その答は簡単だ。まず第一に、死ぬからである。
 今年の夏もそろそろ、「炎天下の車内で乳児死亡 親はパチンコに熱中2時間」などというニュースが新聞やテレビをにぎわすころだろう。飽きもせずにくり返される愚行で、もはや日本の夏の風物詩と化している。一体これで、どれだけの子供が死んでいるのだろうか。正確な数はわからないが、報道されるのは氷山の一角だろう。こんな愚かな親がいるから、ますます子供が減ってしまうのだ。
 では、このような事故を防ぐために何をするべきか。法律の整備が急務であることはもちろんだが、それでは今年の夏には間に合わない。そこで提案だが、みんなでハンマーを持ってパチンコ屋の駐車場を巡回してはどうか。そして、車内にいる子供を見つけたら、ハンマーで窓を叩き割るのだ。これで多少なりとも少子化傾向に歯止めをかけることができる。
 なに、他人の車を破壊するのはしのびない? 大丈夫、これは子供の生命を救うための緊急避難である。罪に問われることはない。安心して叩き割ろう。ストレス解消も兼ねて、一石二鳥である。

 なぜ子供が減るのか。その答は簡単だ。第二は、さらわれるからである。
 子供が突然行方不明になるのはよくある話である。神隠しだとか怪人赤マントの仕業だとかタイムスリップだとか色々なことが言われているが、どれも間違いだ。本当は、サーカス団にさらわれているのである。サーカス団では幼い子供をさらってきて酢を飲ませたり養成ギプスをはめたりして特訓し、一人前のサーカス団員に仕立て上げるのだ。これは、私が幼いころからくり返し母親に聞かされたことなので真実であろう。
 まあ、この場合は、子供は死んでしまうわけではない。サーカス団が日本にいる限りは日本人の子供の数は減らないので、それほど気にすることはないだろう。だから、外国に連れ去られることだけを防げばよい。
 では、どうすればよいか。ボリショイサーカスや中国雑技団などの外国から来ているサーカスに子供がいるのを発見したら、即刻取り戻すのだ。もちろん、これも緊急避難であるから罪に問われることはない。なお、子供たちは洗脳により日本語を忘れてしまっているかもしれない。ロシア語や中国語をしゃべっていても、有無を言わさず取り戻すのだ。顔立ちや髪の色や目の色も変えられているかもしれない。惑わされてはいけないのだ。

 なぜ子供が減るのか。その答は簡単だ。最大の原因は、大人になるからである。
 いかに死んだりさらわれたりする子供が多くとも、全体の中ではごく一部だろう。ところが、これは違う。すべての子供に平等に訪れる事態だからだ。子供は成長して大人になる。子供ではなくなってしまうのだ。ならば、話は簡単である。大人にならないようにすればいいのだ。
 と言っても、ホルモンを投与して成長しないようにする、ということではない。そのような非人道的なことが許されるわけはない。「子供」としてあつかう期間を伸ばしてやればいいのだ。すなわち、法律上の様々な年齢制限を、今の倍に引き上げるのである。
 具体的にどうするかというと、まず小学校入学は12才とする。小学校卒業は24才、中学卒業は30才、高校卒業は36才、大学卒業は44才だ。そして、40才以下は「未成年」と定義するのだ。もちろん、選挙権も酒も煙草も40才からである。
 まさにコロンブスの卵、目からウロコが落ちるとはこのことだ。「子供」の定義をちょっと変えてやるだけでよかったとは。これで未成年者の人口は一挙に倍増だ。少子化問題は完全に解決する。素晴らしい。完璧な対策である。

 はっ、そうすると私は今高校生、まさに青春真っ盛りである。よし、がんばるぞ!




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